お盆も近くなりましたので、涼しくなるお話を書いてみたいと思います。
今回は私の母校にまつわる怖い話をご紹介します。
それは、神奈川県のとある小学校でのお話です。
私が通っていた小学校はとても古く歴史ある学校です。
在学中に80周年記念を祝った記憶がありますから、
今では創立120年を超えています。
当然ながら校舎や体育館などは幾度か建て替えられているのですが
学校の怪談というものは、たとえ建物が変わったとしても
その場所にまつわる怖い話としておそらくずっと言い伝えられるものでしょう。
歴史ある学校であれば、より多くの怪談話も集まるのではないでしょうか。
学校の13怪談
そのような古い学校ですから、
生徒たちの間では何時からともなく言い伝えられてきた「学校の怪談」があります。
それは全部で13もの話があり、
またその全てを聞いてしまうと死んでしまうという言い伝えもあって
『学校の13怪談』として恐れられていたものです。
当時小学生だった私も大変怖かった記憶が残っており、
怪談話をしてくる友人から逃げたりもしました。
なにせ全部聞いたら死んでしまうのですから、
最初こそ興味津々だったものの
5つか6つ聞いた後からはだんだんと恐怖が勝ってくるのです。
ただ、実際に全ての怪談を聞いたという友人は聞いたことがなく、
本当に13個もの話があったのかは全くもって不明です。
数字の謎
今思えば何故13個だったのか。
とくに古来の日本では「13」という数字は不吉なものではなかったはずです。
小学生たちが「13」という数字に不吉なイメージを抱くようになったのは、
おそらく映画「13日の金曜日」が発端ではないかと思われます。
しかし、そこが起点となって13怪談へと結びついたのか、
それとも元々いくつもの怪談話があって13話にまとめられたのか、
もう何十年も前のことですし、おそらく子どもの作り話であろうことからも
今となっては調べようもないことです。
回転遊具の怪談
さて、この13怪談のうちの一つに次のようなものがあります。
「4人で回転遊具を13回まわした後、4人揃って桜の木に向かい『はなこさん』と呼ぶと女の子の顔が桜の木に浮かぶ」
といった内容だったと記憶しております。
不思議なことにここでも「13」という数字が出て来ており、
また日本では「死」を連想させることからも不吉とされる「4」という数字があります。
数字との結びつきは全く不明ですし、何故「はなこさん」なのか?
いわゆる「トイレの花子さん」との結びつきを連想させられるのですが、
実は13怪談の中のひとつには「体育館のトイレに花子さんの霊が出る」という話もありました。
小学生の怪談話ですからいい加減なもので、
今思い返せば何故あんなに怖がっていたのだろうかと不思議に感じるものです。
夜の校庭に一人で桜の木見上げる少女
さて、長くなりましたがここまでは前置きとなります。
実は、先に記載した13怪談とは別に次のような話がありました。
この話の方がよほど怖かったと記憶していたため、ご紹介したいと思ったしだいです。
登場人物は二人の小学校教師で、
ここでは20代女性のA子先生と、もうひとり30代男性のB雄先生としておきます。
私が小学校に入る前、このお二方の先生の身に起こった話と聞いています。
梅雨も開け、もうすぐ夏休みになるという蒸し暑いある夏の日の放課後のこと。
その日、A子先生は子どもたちが遊んでいる姿を2階にある職員室の窓から何気なく眺めていました。
すると、回転遊具の方向から「はーなーこーさん」と子どもたちが声を揃えて呼ぶ声が聞こえます。
A子先生は「ああ、例の13怪談をやってるな」と思いました。
この学校に来て数年が経ち、たまに聞こえる「はなこさん」を呼ぶ声、
他の先生や生徒からも13怪談についてはよく聞いていたものです。
その日の夜、20時頃のことでした。
A子先生とB雄先生は遅くまで残り職員室で仕事をしていました。
校庭側の窓を背にして窓際の席に座るA子先生と少し離れた席で廊下側を背にしてに座るB雄先生。
二人は公言したわけではありませんが恋人同士だったとのことです。
B雄先生が何となくA子先生の方を見たとき、
窓の向こうの校庭に女の子が一人立っているのがぼんやりと見えました。
B雄先生は不審に思い「A子先生、あの校庭にいる女の子は誰でしょうか?」と聞きました。
A子先生は、この時ふと放課後の「はなこさん」を呼ぶ声を思い出しました。
時刻も20時を回っており校庭に子どもがいるはずはありませんから、
何か得体の知れない恐怖に駆られたのも無理はありません。
一瞬躊躇しましたが気を取り直し、振り返って校庭を確認しました。
その女の子は、胸のあたりに何か黄色っぽいキャラクタがプリントされたグレーのロングTシャツと紺色の長ズボンを着ており、靴は白の運動靴、髪型はショートカットヘアではありましたが遠目からでも高学年くらいの女の子であることが見分けられました。
校庭に電灯はないため顔はハッキリと認識できず、誰なのかはわかりません。
その女の子は、体を少し斜めに校舎側へ向けて顔は桜の木を見上げるように立っていました。
B雄先生は窓を開けて「おーい、そこの君!どうした?何をしているんだ?」と叫びました。
すると女の子はスーッとこちらに顔の向きを変えましたが特に返事をする様子はありません。
B雄先生は続けて「君はこの学校の生徒か?」と聞きましたがやはり返事はありませんでした。
B雄先生は、A子先生に向かい「ちょっと見に行ってきますね。」と声をかけ、
懐中電灯を持って走って行きました。
しばらくするとB雄先生が懐中電灯で足元を照らしながら校庭に出てくるのが見えます。
まっすぐに女の子がいる方向へ向かうのですが、
なぜか女の子には声を掛けず懐中電灯であちこち照らしながら女の子を探しているようでした。
その時、A子先生は違和感に気づいたのです。
B雄先生の姿は暗闇の中で人が動いているのがわかる程度なのに、
女の子の方は光が当たっているわけでもないのに容姿の判別がつくほどに明るいのです。
まるでぼんやりと女の子自身が弱い光を放っているような見え方に、気づいてしまったのです。
B雄先生が女の子を探している間もA子先生には女の子が見えていましたが、
こちらをずっと見つめる女の子が恐ろしくて声を出すことは出来ませんでした。
B雄先生が探すのを諦めたのかこちらへ戻ってくる姿が見えたときです。
A子先生は、B雄先生がそのまま進めば女の子とぶつかってしまうことに気づきました。
声を出そうとしたのですがまるで金縛りにあったかのように声が出せません。
B雄先生と女の子ぶつかった、いや重なった瞬間、女の子の姿はフッと消え、それと同時に金縛りも解けました。
ホッとしたのも束の間でした。
廊下の方から「ミシッ」と何か動く音がして誰かがいるような気配を感じました。
反射的に後ろを振り向いたのですが、そこには誰もいませんでした。
しかし、窓の方に向き直った時です。
窓越しに映る自分の姿のすぐひだり横に、
先程の女の子がA子先生を見上げるようにして立っているのが見えたのです。
恐ろしさのあまり、A子先生はそのまま気を失ってしまいました。
校庭にいたB雄先生は戻る途中でA子先生に声を掛けようと職員室を見上げた時、
ゆっくりと倒れるA子先生が見えました。
そして、職員室がある校舎とは別棟3階の教室の窓に先程の女の子が立っている姿が見えたとのことです。
あとがき
お話はここまでとなります。
ここで幽霊と思われる女の子についてですが、
特にこの学校で在学中の女子生徒が亡くなったという話は聞いたことがなく、
ましてや校舎から飛び降りたとか桜の木で自殺があったなんて話もありませんでした。
また、この女の子についてはこの話以外に聞いたこともなく、
他の人が見たと云う話もありませんでした。
後日談もありませんし、いったい何だったのかは不明です。
この先生二人が経験した話、この話自体も私が入学する前のことですから本当かどうかはわかりません。
しかし、少なくとも13怪談よりは怖い話だったと感じたものです。
私が卒業した後、回転遊具は世間的に事故が多発したこともあり、撤去されてしまいました。
そのことを知った時、怪談話の一つが失われたのだなと少し寂しく感じました。
でもきっと、また新しい怪談話が生まれているのではないでしょうか。
(余談)
職員玄関の前にある石膏の胸像には人の骨が入っているらしいですよ!
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